牛飼いの生き様に希望を見出し、原発なき社会を目指す|針谷勉さん2016/10/28

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針谷 勉さん

 

 

「しぇあわせ」登録団体を訪問し、寄付先プロジェクト設立の背景や今後の展望を紹介するレポート企画。第10回に登場いただくのは、福島で被ばく牛の保護活動を行う「希望の牧場・ふくしま」。殺処分指示が出された牛たちを、原発事故の生き証人として保護・飼育しようと思ったきっかけや今後の展望について、映像ジャーナリストとしても活動する事務局で広報を務める針谷 勉さんにお話を伺いました。

 

 

—— プロジェクト設立のきっかけを教えてください。

 

 東日本大震災に伴う福島第一原発の爆発事故で原発周辺の地域ではペットや家畜の多くが置き去りにされました。ペットに関しては動物愛護の団体や個人が救済に乗り出したんですが、牛などの大きな家畜については一般の人はなかなか手が出せず、2011年5月には国から殺処分指示が言い渡されました。旧警戒区域(福島第一原発から半径20キロ圏内)に牛は原発事故前、約3,500頭いたんですが、そのうち約半分が牛舎に閉じ込められたまま餓死しました。残りの半分は、畜主さんが避難する際に牛舎の扉を開けるなどしたため、かろうじて生き残りました。

 

 私は福島第一原発の1号機が爆発した直後に取材で福島入りしていまして、誰もいない町に残って被ばく覚悟で牛の世話を続けている牛飼いが10人ほどいることを知ったんです。そういった方々のお手伝いができないかなということで、牛飼いのひとりだった吉沢正巳さんを代表に、当時民主党衆議院議員だった高邑勉さんらと共に、「希望の牧場・ふくしま」のプロジェクトを立ち上げました。

 

 

 

 

 

—— 「希望の牧場・ふくしま」は現在、どのような状況にあるのでしょうか?

 

 当時、吉沢の牧場には約330頭の牛がいました。その後、もう継続できないと他の農家さんからレスキューの依頼があった牛、百数十頭を受け入れ、さらにこの5年の間に誕生した約100頭の仔牛を合わせると、合計550頭くらいになっているはずなのですが…実は200頭あまりが死んでしまったんです。事故直後は餌不足の問題があり、栄養不足から病気になったり、管理が行き届かず牧場でケガをしたりする牛も多かったんですが、牧場は福島第一原発から14キロ地点の浪江町にあり、当時、放射線量が20マイクロシーベルト/毎時もあったので、獣医さんも呼べなかった。現在は1~3マイクロシーベルト/毎時ほどですが、それでも東京の約300倍。「希望の牧場」と名付けたものの、実は「絶望の牧場」でもあって、厳しい情況は今も変わっていません。

 

 

 

 

 被ばくして売れなくなった牛を飼い続けることは非常に大変で、今いる330頭に必要な餌は1日約5トン、まともな餌を購入すると1年飼育するのに1憶円かかるんです。そこで、私たちは、募金を集め、タダでもらえる餌を探して、それを牧場に運んでいますが、今現在、あと80日分の餌しかなく、仮に今日から何もしなかったら、330頭の牛が80日後には餓死してしまうんです。

 

 

 

 

 

 

被ばくした牛たちを原発事故の生き証人に

 

—— メンバーはそれぞれどんな役割を担っているんですか?

 

 基本的に、代表の吉沢、事務局長の木野村と私の3人体勢なんですが、木野村と私は普段、仕事をしています。なので、330頭の日々の牛の世話は吉沢がやっています。私と木野村はこの牧場を維持するための資金集めと餌集めをしています。仕事が休める日には、東北や関東に出向き、タダでもらえそうな牧草を探し出し、所有者との交渉を重ねています。今も、週末には全国から数人、ボランティアの人たちが来てくれますが、リピーターが多く、新規の人は少ないです。犬や猫とは違い、餌やりにしても重機を使うので、一般の人が手伝える範囲が限られてしまうし、寄り付きにくいっていうのはあるんでしょうね。

 

 私たちは動物愛護団体ではないんです。もともと食用として出荷していた牛ですし、もちろん目の前の命を見捨てないという気持ちは私たちのなかにも当然ありますが、あくまで「被ばくした牛たちを原発事故の生き証人として生かし続けながら、原発のない世の中をみんなで考えよう、実現しよう」これを、団体の目標としています。でも、原発の2文字がつくとスポンサーがつきにくいので、個人の寄付に頼るしかない。牧場の現状や牛たちの様子をまとめた新聞を年に2〜3回発行して、個人の支援者の方々に報告したり、SNSを介して広報活動をしたり、原発事故の当事者である吉沢さんの講演会を開催して、寄付をお願いしています。

 

 

 

 

――5年続けてこられて、プロジェクトは多少でも良い方向に好転しているんでしょうか?

 

 「5年も経ったんだから復興も進み、いろいろ元通りになっているんだろう」という印象をお持ちの人も多いようで、プロジェクトへの関心も寄付金も右肩下がりです。「希望の牧場」に限らず、福島は原発事故後から何も変わっていないように私は思います。原発そのものも収束してないし、いまだに約9万人が避難生活を送っています。除染を含む原状回復に一体何年かかるのか、復興とはその先の話です。つらい話や悲しい話を聞きたいという人は少なく、テレビも視聴率がとれないからか、あまり取り上げなくなってきていて、その中で忘れられてしまうんですよね。

 

 経済活動をしているわけではないので、当然牛を育てても出荷できるわけでもないので、見返りはない。東北大学の研究者らと牛たちを生かしたまま血液採取などして、被ばくの影響調査をすでに3年継続してきましたが、このデータが活かされる日はまだ先になりそうです。この5年、牛を生かす、活かす意味を考えながら、解決策を模索してきましたが、今のところこれといった解決策はないのが正直なところです。10年頑張ればなにか成果を上げられるんじゃないかと、あと5年がんばろうと最近決めたばかりなんですが…その元となるお金も餌もないし、意地だけで続けています。

 

 

 

 

 

 

1人の牛飼いの生き様に、見出した希望

 

――その気持ちが続く理由はどんなところにあるのでしょう?

 

 経済価値のない牛を生かし続ける「希望の牧場」代表の吉沢の牛飼いとしての生き様に、希望を感じだからだと思います。吉沢の牧場の脇に県道が走っていて、そこは取材で第一原発まで行くルートでもあったんですが、牛が元気に牧草を食べていたんですね。「なんでここの牛は元気なんだろう?」と、時間に余裕ができた時に寄ってみたら、マスクもせずに普通に牛と接する吉沢がいて、いろいろ取材をしているうちに、信念で牛飼いを続ける吉沢の生き方に惚れこんでしまいました(笑)。

 

 当時も今も、例えば、仮設住宅で話を聞いても、希望を語る人はほとんどいません。国や東電への不満、賠償金など、お金のことばかり考えざるを得ない中、お金はもちろん大事なんですけど、お金以外にもものさしがあることを私は吉沢に教わったんです。

 

 

 

 

――しぇあわせユーザーへメッセージをお願いします。

 

 実は、「しぇあわせ」で寄付金を集める気持ちはあまりありません。むしろ、「しぇあわせ」をきっかけに「希望の牧場・ふくしま」を知ってくれた人が、何か考えて行動してくれる、アドバイスをくれる、あるいは自分で福島のため、牛たちのためにプロジェクトを立ち上げてくれることを期待しています。現場に立ち、自分の目で見て、考え、行動してほしい、そんな思いから、今年10月、初めて牧場ツアーを企画しました。吉沢がガイド役となり、1泊2日で牧場や浪江町を巡り、福島の現状を知ってもらうというものです。

 

 マスコミが大事なことを伝えていないことも大きいですが、福島や原発事故について正しく知るには、自分で現場に立って、自分の目で見て考えることが大事だと思っています。なので、ぜひ現場に足を運んでほしいですね。そして、知ったことや感じたことを、SNSなどで拡散してもらえると、それが今後の「希望の牧場」の活動にも、良い形でつながるのかなと思っています。

 

 

 

 

INFORMATION

 

 

針谷 勉


1974年生まれ。栃木県出身・東京都世田谷区在住。映像ジャーナリスト。

 

▼ facebookhttps://www.facebook.com/kibounobokujyou

▼ Twitterhttps://twitter.com/kibounobokujyou

▼ ブログhttp://blog.goo.ne.jp/kibouno-bokujyou

 

 

 

 

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